ぶらり歴史旅

歴史、文化、グルメに触れる教養チャレンジ!

国際観光地に発展した箱根

神奈川県足柄下郡の大涌谷

神奈川県の西部を占める箱根は、かつて火山活動でカルデラ地形を形成しました。箱根七湯といわれた豊かな温泉は多くの人びとに親しまれ、都心に最も近い立地条件から国内のみならず海外からも多くの観光客が訪れました。大手企業は観光客の集客のためしのぎを削り、日本の観光開発史における企業間競争の象徴となる箱根山戦争に発展しました。

箱根の形成

箱根山はおよそ40万年前に火山活動が始まり、25万年前には何度も噴火を繰り返したことで標高2700メートルにもなる富士山型の成層火山となりました。およそ18万年前に山の中心部分が陥没して箱根カルデラを形成したと考えられています。カルデラの直径はおよそ10キロメートルにも及ぶため、巨大な火山を形成していたと考えられています。

箱根の地形

カルデラを形成した箱根火山は、中央部に神山と駒ヶ岳などの中央火口丘があり、これを明神ヶ岳や明星ヶ岳などの外輪山が取り囲みます。中央火口丘はおよそ4万年前に形成したと考えられています。およそ3000年前に神山が爆発を起こし、湖が埋め立てられて仙石原が湿原となり、神山の崩落で堰き止められたカルデラ湖は芦ノ湖となりました。爆発で吹き飛ばされた大涌谷は今も噴気を盛んに上げており、地下ではマグマが生成されていると考えられています。

神奈川県足柄下郡の芦ノ湖

芦ノ湖

およそ3000年前の噴火による土砂が古い早川を堰き止め、その上流に水が溜まり湖となりました。芦ノ湖には九頭竜が棲むと伝えられ、万巻上人が鎮めたと伝わります。

神奈川県足柄下郡の大涌谷

大涌谷

3000年前の噴火と2900年前の小規模な火砕流で堆積した火山砕屑物と山崩れで形成しました。明治6年(1873年)の明治天皇の行幸で大地獄から大涌谷に改称されました。

箱根温泉

箱根の温泉は、天平10年(738年)頃に発見されました。伝承では関東で天然痘が流行していたため、白山を開山した泰澄尊師の弟子・浄定坊が湯本を訪れて十一面観世音菩薩を安置して白山権現の降臨を祈念したところ、たちまち温泉が湧出して天然痘患者を治癒したとされます。

箱根七湯

箱根温泉は湯本温泉から始まり、芦ノ湯、底倉、堂ヶ島、木賀、宮ノ下と開湯し、慶長10年(1605年)に塔ノ下が開湯したことで箱根七湯と呼ばれるようになりました。天正18年(1590年)に小田原征伐に向かう豊臣秀吉は、北条氏が管理していた底倉温泉を湯治場として活用しました。江戸時代になると3代将軍・徳川家光から献上湯として江戸に温泉が運ばれました。

神奈川県足柄下郡の元箱根石仏群

元箱根石仏群

噴煙が立ち上る箱根は地獄として恐れられ、鎌倉時代終わりから室町時代前期にかけて旅人を救う仏として信仰された地蔵菩薩を祀る多くの石仏や石塔が造られました。

箱根の信仰

芦ノ湖にある九頭竜神社に祀られる九頭竜大神は、人びとに悪さをする悪龍でした。人びとは毎年若い娘を九頭竜大神に捧げていましたが、この噂を聞きつけた万巻上人が芦ノ湖で三日三晩祈祷を行い九頭竜大神を降しこの地域の守り神としました。万巻上人は箱根神社を創設しました。

神奈川県足柄下郡の箱根神社

箱根神社

山岳修行僧のひとり万巻上人が来山して山中で修行していたところ、天平宝字元年(757年)に霊夢の告げにより芦ノ湖畔に三所権現を勧請したことに始まります。

神奈川県足柄下郡の九頭竜神社

九頭竜神社

芦ノ湖に住み着く毒龍が村人を苦しめていたのを万巻上人が法力で退治し、改心した龍が守り神になることを誓い、祀られたのが九頭龍神社とされています。

福沢諭吉と箱根

明治初期に保養地として箱根塔ノ沢を訪れていた福沢諭吉は、明治6年(1873年)に箱根の発展には道路及び交通の整備が必要であることを足柄新聞に寄稿し、インフラ整備が進められるようになりました。福沢諭吉から国際観光の重要性を説かれた山口仙之助は、明治11年(1878年)に外国人専用のホテルとして箱根に富士屋ホテルを創設しました。富士屋ホテルは、大正3年(1914年)に富士屋自動車を設立して路線バスの運行を始めました。

交通網の整備

軽井沢の開発に成功した西武グループは、大正9年(1920年)に箱根の観光開発に着手し、芦ノ湖で定期航路を行う箱根渡船組合と箱根町渡船組合を合併して箱根遊船を設立したほか、十国峠線、早雲山線、湖尻線の自動車有料道路を開通して道路の覇権を握りました。大正8年(1919年)に湯本~強羅間で登山鉄道を開通した小田原電気鉄道は、大正10年(1921年)に箱根登山ケーブルカーを開業したことで、湯本から早雲山まで登山鉄道とケーブルカーを乗り継ぎ、芦ノ湖まで歩いて船で元箱根まで観光する客が増加しました。この人の流れを受け、大正11年(1922年)に小田原電気鉄道と箱根遊船は提携して箱根周遊切符の販売を開始しました。昭和3年(1928年)に小田原電気鉄道は日本電力に売却され、鉄道部門は箱根登山鉄道として発足しました。昭和8年(1933年)に富士屋自動車は箱根登山鉄道からバス部門を譲り受け、富士箱根自動車と社名を変更してバス交通を独占しますが、戦時中のガソリン統制で経営が悪化して箱根登山鉄道の傘下となりました。

神奈川県足柄下郡の富士屋ホテル

富士屋ホテル

明治11年(1878年)に日本初の本格的なリゾートホテルとして開業しました。昭和20年(1945年)から昭和29年(1954年)まで米軍の施設として運営されました。

箱根山戦争

アジア太平洋戦争が終結すると、箱根登山鉄道としてバス路線を独占していた小田急・東急グループと、箱根遊船を駿豆鉄道として一本化していた西武グループによる縄張り争いが起こりました。西武グループは小涌谷から小田原までのバス路線を申請し、小田急・東急グループの箱根登山鉄道は強く反発しました。箱根登山鉄道は対抗措置として小涌谷から早雲山に至るバス路線を申請し、この対抗として駿豆鉄道が西武グループが建設した有料道路への路線バスを申請し、箱根登山バスの有料道路への乗り入れを阻止しました。両社は芦ノ湖遊覧船事業でも対立し、小田急・東急グループは新たに桟橋を設置して遊覧船事業に乗り出し、県が強制的に桟橋を撤去する事態となりました。

箱根山戦争の終結

小田急・東急グループと西武グループは訴訟合戦に突入し、西武グループが小田急の株を買い進める事態となりました。昭和32年(1957年)に小田急・東急グループは真っ向勝負を避け、都心からの集客を集めるために新宿から小田原までロマンスカーの運行を始めました。これには西武グループも対応できず、西武グループも対応を軟化させていきました。小田急・東急グループが早雲山から大涌谷を経て桃源台に至るロープウェー建設を計画すると、西武グループはこれを認め、昭和35年(1960年)にロープウェーが開業しました。こうして小田急系の交通機関だけで箱根を周遊できるようになり、神奈川県から西武グループの有料道路買収が行われたことで箱根山戦争は事実上終結しました。

神奈川県足柄下郡の箱根ロープウェイ

箱根ロープウェイ

昭和34年(1959年)に早雲山~大涌谷、翌年に大涌谷~桃源台が開業しました。平成20年(2008年)に年間乗車人数が200万人を突破してギネス世界記録に認定されました。

箱根神山と中央火口丘

箱根神山と駒ヶ岳は、箱根中央火口丘で最高峰となります。5万年前頃から活動を始めた成層火山で、頂上には溶岩ドームが形成しています。およそ3000年前に神山が噴火して、山体が大きく吹き飛んだ後に溶岩ドームがせり上がり冠ヶ岳を形成し、その麓に大涌谷が盛んに噴気を上げています。

山行日
2005/4/02
天 候
晴れ
ルート
早雲山駅(9:30)~大涌谷分岐(10:45)~冠ヶ岳(11:25)~神山(11:45)、神山(12:30)~防ヶ沢分岐(13:00)~駒ヶ岳(13:20)~防ヶ沢分岐(13:40)~姥子(15:15)~大涌谷(16:20)
地 図
山と高原地図「箱根」
同行者
ひめ
標 高
神山(1437.9m)、駒ヶ岳(1327.0m)
神奈川県足柄下郡の箱根神山

箱根神山

5万年前前頃から現在の神山を中心とする中央火口丘の活動が始まり、約3万年前から溶岩ドームの形成と崩壊が繰り返されて現在の中央火口丘が形作られていきました。。

神奈川県足柄下郡の冠ヶ岳

冠ヶ岳

3000年前に神山北西斜面の水蒸気爆発で崩壊し、およそ2900年前に小規模な火砕流が生じるとともに地下からマグマが上昇して溶岩ドーム形成しました。

神奈川県足柄下郡の箱根駒ヶ岳

箱根駒ヶ岳

駒ケ岳は古来より神山をご神体とする山岳信仰が行われた場所で、馬降石や馬乗石などの祭祀遺跡が残り、万巻上人が開いた箱根神社の元宮が遷座しています。

箱根外輪山

50万年前に活動を始めた比較的古い火山で、金時山や明星ヶ岳などの成層火山を作りました。その後も火山活動が続き、大量の火山灰を飛ばす爆発的な噴火が数回起こり古期外輪山を形成しました。16万年前頃からは浅間山や屏風山などの新期外輪山が形成していきました。

山行日
2005/2/6/2005/11/15/2007/05/10
天 候
晴れ/曇り/晴れ
ルート
道了尊(9:25)~見晴小屋(10:20)~明神ヶ岳(11:40)、昼食、明神ヶ岳出発(12:50)~明星ヶ岳山頂(14:00)~宮城野(14:50)
道了尊(9:00)~見晴小屋(10:00)~明神ヶ岳(11:16)、昼食、明神ヶ岳(12:15)~明星ヶ岳(13:25)~宮城野(14:35)
最乗寺(09:30)~明神ヶ岳(11:35)~宮城野(13:50)
地 図
山と高原地図「箱根」
同行者
ひめ/Bさん/Dさん
標 高
明神ヶ岳(1169m)、明星ヶ岳(924m)
神奈川県足柄下郡の明神ヶ岳

明神ヶ岳

約27万年から23万年まえに活動した古期外輪山で、穏やかでなだらかな山容をしています。奈良時代には箱根最古の碓氷道が通り、日本武尊の伝説も残されています。

神奈川県足柄下郡の明星ヶ岳

明星ヶ岳

50万年前に活動をはじめた古期外輪山のひとつで、活動の初めに形成した成層火山です。頂上直下の山肌に大の字が模れられ、箱根の大文字焼が行われることでも知られます。